障害者福祉にかかわる問題は人権の問題であり、それは障害当事者だけの問題ではなく、社会の問題です。換言すれば、障害者福祉の問題は社会福祉の問題であり、社会福祉の問題は社会保障の問題であるという認識が大切だと考えます。
障害者の権利に関する条約について
2006(平成18)年12月、第61回国連総会にいおいて障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)が採択されました。この条約は、あらゆる分野において障害を理由とする差別を禁止し、障害者の権利を保護するというものです。
日本も2007(平成19)年9月にこの条約に署名をし、2013(25)年12月に条約締結のための国会の承認を得て、批准書を国連に寄託し、障害者権利条約の締約国となり、2014(平成26)年2月より同条約の効力が生じています。
障害者の権利条約が、これからの日本の教育や福祉、就労及び雇用などにどのように関連してくるのか注視していく必要があります。
「施設」 から 「地域」 へということについて
障害を有する場合でも、自らの意思で住まいの場を選び、地域で生活するのが当たり前だとする理念が定着しつつありますが、それが施設を全面的に否定するものであってはならないと思います。当然、「地域」から「施設」へということでもよいわけですし、「施設も地域も、地域も施設も」という考え方であるべきではないでしょうか。
大切なことは、その施設がなぜ必要なのか、そこで何がどのように行われるのか、その施設が地域社会にどのように位置づけられるのかということだと思います。
高齢化への対応について
発達に向かう力が弱ければ、それだけ発達から衰退(老化)へと転ずる時期が早まることが考えられます。日本は今、高齢化が進んでいますが、知的発達に障害を有する人の高齢化に対応した制度上の施策は未整備、未確立のまま、現状は入所施設の努力に大きく頼っています。しかしその施設機能や職員配置等はもともと高齢化に対応するものではないわけです。
一般高齢者を対象とする法制度や施策の範囲で知的障害者の老齢化にも対応できればよいのですが、実際的には問題があり不十分です。知的障害の特質を考慮した就労の場や日中活動の場の確保とともに老齢化への対応も今日的課題となっています。
権利擁護について
人として生まれたならば、誰もが人としての権利を有しているわけですが、生まれてすぐに自らの権利を主張し、行使できる人はいないはずです。 両親や周囲の人々に保護され、他律的に生活行動が導かれる時期を経ることによって、やがて自律的な行動へと変化し、権利の主体としての人格が形成される。それが人の
「自立」 に至る成長発達の過程です。
しかしそうした成長発達に障害を有する場合もあるわけです。ものごとを理解したり判断したりする力が不十分な場合に、その本人に代わって法的に財産管理や身上監護の役割を担う成年後見制度がありますが、この制度の利用に関しては問題課題も多いというのが現状です。
働く権利の保障と福祉的就労の場の確保
障害者の雇用を義務付ける法律があり、就労支援が行われているにもかかわらず、障害者の就労には厳しい現実があります。いうまでもなく障害者にとって就労が喜びや生活の充実につながらなければ意味がありません。企業にとっては、障害者の雇用が経営的にマイナスであっては困るはずです。
障害者の就労支援で留意すべきことは、一般的な就労と同じように考えた支援では無理が生じ得るということです。「障害があるから無理だ」というようよりも、「無理があるから障害がある」というように考えることが、「合理的配慮」の問題を考えるうえで大切だと思います。
人が働くという意味を考えた場合、それはただ単に働く場があればそれでよいということでも、収入を得ることができればそれでよいということでもないはずです。
知的障害者の働く権利の保障ということで就労支援を考えるとすれば、いわゆる「福祉的就労の場」の確保は大変重要だと考えます。
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